” 特別寄与料 ” ってなぁに?どういうものなのか?

 「特別寄与料」とは、2018年の民法改正で新しく設けられたもので、2019年7月1日以降に開始した相続から適用できる制度のことです。従前の民法での「寄与分」とは違った制度ですので、混同しないようにしてください。

 

「特別寄与料」ってどういうものなのか?

 従前の民法では、被相続人(亡くなった人)に対して特別に貢献した相続人のみに報いる「寄与分」という制度がありました。しかし、長男の妻など相続人でない人が生前に介護や看護などで被相続人に対して特別に貢献をしても、「寄与分」が認められることはなく、遺言書がない限り遺産相続で恩恵を受けることができませんでした。この不公平感は、親身になって介護や看護した者にとっては相当忸怩たる思いだったでしょう。
 

 このような不公平感を払拭するために、2018年の民法改正によって、この「特別寄与料」という制度ができ、相続人でない者にも生前に被相続人に対して特別に介護や看護で貢献した場合、その貢献に見合ったものとして遺産をもらうことができるようになりました。

 

「特別寄与料」は相続分ではなく、請求するもの

 ”遺産がもらえるようになった”といっても、勘違いしないでください。法定相続人のように法定相続分というものが決められているわけではありません。「特別寄与料」は、相続開始後に相続人に対して特別寄与者の寄与に応じた額の金銭の支払いを請求することができるようになったということです。

  

「特別寄与料」を請求できるのは誰か?

 では、誰がこの「特別寄与料」を請求できるかといいますと、下記①~③の要件をすべて満たしている人に限ります。

①被相続人の親族
親族とは、被相続人の配偶者、6親等以内の血族、3親等以内の姻族をいいます。
(そのうち相続人、相続放棄した人、欠格または廃除によって相続権を失った人は除きます)
 注)法的に婚姻関係がない人(事実婚)、親族でない家政婦なども特別寄与者の対象外。

②被相続人に対して無償で療養看護などをした人
特別寄与料は無償で行われた療養看護その他の労務の提供に限定されています。
(寄与分の場合、事業に対する出資や有償での労務提供も認められます)

③被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした人
被相続人の財産を増やしたり、減らしたりしなかったなど出費を抑えるのに貢献したことが必要です。
精神的な支援だけでは支援になりません。

 

「特別寄与料」ってどれくらい請求できるの?

 特別寄与料の額については、明確な基準は設けられておりません。そのため特別寄与者と相続人間で協議して寄与の期間や程度、遺産の総額などを勘案して特別寄与料を決定することになります。

 協議して決めるといわれても目安がないと実際には難しいでしょう。そのためあくまで参考ですが、下記のような計算式があります。

(療養看護の場合)
 【計算式】
  第三者が療養看護を行った日当額×療養看護の日数×裁量割合

 ※ 日当額とは介護報酬基準額等を参考にして日当額を決めます。
 ※ 裁量割合とは介護等の専門職でない親族が療養看護を行ったことを考慮したもので
   0.5~0.8の割合をかけます。

 (被相続人の家業に従事した場合)
 【計算式】
  通常得られたであろう給与額×寄与期間-被相続人からの生活費相当額

 注)ただし、特別寄与料は被相続人が相続開始の時において有していた財産の価額から
   遺贈の価額(遺言によって分け与えられた財産の価額)を控除した残額を超えることは

   できません。

 

「特別寄与料」は相続税法上、被相続人からの遺贈とみなされる

 特別寄与料を受け取った場合、相続税法上はどういった扱いになるのでしょうか?

 特別寄与料を受け取った特別寄与者は、被相続人から遺贈を受けたとみなされます。ですので、特別寄与料が相続税の課税価格になります。

 ※ なお、特別寄与者は基本的に1親等の血族及び配偶者以外の人になるので、
   2割加算の対象になることに注意が必要です。
  (特別寄与者の相続税の申告期限は、特別寄与料の額が決まったことを知った日の翌日から10カ月以内)

  

 最後に、特別寄与料の制度については改正後それほど間もないため、まだまだ浸透しているとは言えません。
 そのため、請求するにはそれなりのハードルがあります。相続人と交渉したり、請求額の根拠を示したりと簡単ではありません。当事者間での協議が調わないときは、特別寄与者は家庭裁判所に申立てをすることができますが、申立期限は、特別寄与者が相続開始及び相続人を知った時から6カ月を経過した時または相続開始の時から1年を経過した時までなので、かなり短い期間で交渉しなければ間に合いません。これらのことにも留意して請求するかを検討してください。(やはり、法改正があったといっても遺言書に記載してもらうほうが話は早いということになります)

 

 

相続

Posted by riplaboblog