不動産登記法などの改正法が成立・公布されました。相続登記の義務化施行に向けてその内容とスケジュールは?
所有者不明の土地問題の解決に向け、民法や不動産登記法の改正法などが2021年4月21日に成立し、28日に公布されました。施行はもう少し先になりますが、その内容と今後のスケジュールをお話したいと思います。
相続登記の義務化や民法の見直し、新たな制度の創設も
これまで(現在もまだそうですが)、相続した不動産の登記は義務ではありませんでした。そのため、所有者不明の土地問題が頻発して社会問題化しております。平成30年版土地白書によれば、不動産登記簿のみで所有者の所在が確認出来ない土地の割合は、2割以上にも上るとのことです。
これでは不動産を有効に活用出来ないのはもちろんのことですが、未整備の土地が増えてゆき地域環境の悪化や場合によっては危険を孕んでしまうことにもつながってしまうでしょう。そのため法改正がなされたのです。
今回の改正では、次のような改正や法制度が創設されました。
1. 不動産登記制度の見直し
2. 土地利用に関する民法の規律の見直し
3. 相続土地国庫帰属制度の創設
その具体的な内容とはどんなものか?
今回の法改正や法制度の創設の具体的な内容は、相続登記・住所変更登記の義務化やその手続きの簡素化や合理化がなされました。
具体的には、不動産を取得した相続人は、
・不動産の取得を知った日から3年以内に登記申請を行う義務があること
・正当な理由なく申請を怠った場合には10万円以下の過料が科されること
となりました。
上記の3年以内の相続登記義務は、法改正以前に相続したもので登記していない物件にも適用されます。その場合の相続登記の期限は、相続によって不動産の取得を初めて知った日あるいは改正法の施行日のいずれか遅い日から3年以内です。
また、当初法定相続分で登記をし、その後に遺産分割をした場合は、遺産分割で法定相続分を超える所有権を取得した相続人が、遺産分割から3年以内に登記義務を負うことにもなりました。
あと、「相続人申告登記(仮称)」が創設されました。これは相続登記の義務を負った者が、3ヶ月以内に不動産の所在する法務局に「不動産の相続人」であることを申し出て、登記官が職権でその者の氏名や住所などを登記記録に付記することで、登記義務を履行したものとみなします。相続登記が期限内に間に合わない場合の利用を想定した制度です。ただし、この制度の登記記録上の不動産の相続人には所有権は移転していないので、遺産分割によって不動産を取得した者は、遺産分割から3年以内にその登記をしなければなりません。
さらに、相続登記義務だけでなく、氏名や法人の名称、住所移転による変更登記も義務化されました。こちらは、変更から2年以内に正当な理由なく登記を行わなかった場合に、5万円以下の過料に処せられることになりました。
最後に相続土地国庫帰属制度の創設です。土地の相続人は、法務大臣に相続した土地の所有権を国庫に帰属させることについて、承認を求めることができるようになりました。
ただし、対象となる土地は下記の条件をすべて満たしている必要があります。
- 土地上に建物がないこと
- 土地に担保権・私用収益を目的とする権利が設定されていないこと
- 土壌汚染がないこと
- 境界に争いがないこと
- 土地の通常の管理・処分を阻害する工作物、車両・樹木などが土地上にないこと
- 土地の通常の管理・処分をするために除去しなければならない物が土地の下に存在しないこと
- 通常の管理・処分をするのに過分の費用・労力を要する土地でないこと
など
そのほか、申請には手数料がかかりますし、国庫への帰属が承認された場合には、国が10年間管理するために必要な費用を納める必要もあります。(目安として、200㎡の宅地で約80万円程度)
施行まではあとどのくらいか?
以上、具体的な内容についてお話してきましたが、では施行日はいつごろになるのでしょうか?
施行日は原則、公布日(2021年4月28日)後2年(2023年)以内の政令で定める日となっているのですが、
〇 相続登記義務化関係の改正は公布後3年(2024年)以内の政令で定める日
〇 住所変更など登記義務化関係の改正は公布後5年(2026年)以内の政令で定める日
とされています。
施行日までにはこれからも、より具体的な手続き方法や関連する施策も決まっていくことでしょう。登録免許税の減税措置などの相続登記をしやすくすることも検討されているようです。
これまでの相続登記に関する認識は今後通じなくなります。ですので、不動産を相続した際にきちんとした対応ができるように改正内容などを把握するようにしましょう!!