奨学金返済に関する裁判からわかる保証人に関すること!!

 2021年5月13日に札幌地裁で判決が出ました奨学金返済に関する裁判から保証と連帯保証の違いを改めて学び直しました。今回はそのお話をさせて頂きたいと思います。

 

奨学金返済に関する裁判の内容とは?

 日本学生支援機構(以下、機構)の奨学金を借りた本人と連帯保証人の親が返せないケースで発生しました。
 機構は上述の二人が返せないということで未返還額の半分しか支払い義務がない保証人である親族らに、その内容を伝えないまま全額を請求して実際に全額返済が完了しました。その後、未返還額の半分しか支払い義務がないことを知った保証人らが機構の請求は違法だとして、過払い分の返金や損害賠償を求めた裁判です。

 このようなケースは、記録が残る過去8年間で延べ825人にのぼり、総額約13億円を全額請求し、9割以上が応じたというのです。

 独立行政法人である(言ってしまえば、国の機関である)日本学生支援機構がそんな回収方法をしていいものかが問われることになったのです。

 

保証人と連帯保証人とは何が違うのか?

 ここで改めて”保証人”と”連帯保証人”とでは、何が違うのかお話しましょう。
 ”主債務者が返済できなくなったときに”という点では同じですが、権利や義務の範囲が異なります

 保証人には、次の権利や義務の範囲が認められております。

  ① 催告の抗弁権
  ② 検索の抗弁権
  ③ 分の利益

 ①の催告の抗弁権とは、債権者がいきなり保証人に請求をしてきた時には、まずは主債務者に請求するようにと主張することができる権利のこと。

 ②の検索の抗弁権とは、まずは返還能力のある主債務者から返済してもらう、それがかなわないなら、主債務者の財産を差し押さえるよう主張できる権利のこと。

 ③の分別の利益とは、保証人(含む、連帯保証人)が複数人いた場合、保証人はその数で案分した金額だけを負担すればいいとのこと。

 保証人にはこれらの権利や義務の範囲が認められているのですが、連帯保証人にはこれらは一切認められておりません。ですので、ほぼ主債務者と同様の催促が連帯保証人にはなされることになるのです。

  

札幌地裁(一審)での判決はどうだったのか?

 今回は上述の分別の利益について、機構側は「分別の利益を申し出ないで、主債務者又は連帯保証人に代わり、奨学金を全額返還した場合、主債務者には全額、連帯保証人には負担部分を超えて支払った分を主債務者または連帯保証人に求める権利(求償権)がある」と主張したのです。
(要は、分別の利益は保証人が自ら主張しなければ権利の効力は発生しないとの言い分な訳です)

 では、判決はどうだったのかといいますと札幌地裁は「分別の利益は保証人が主張しなくても効果が生じるとし、分別の利益を知らずに返済してしまった場合には、不当利得として返済を求める権利がある」と示しました。
(一審では、保証人側が勝訴したことになります)

 ですが現在、機構側は、一審・札幌地裁の判決を不服として札幌高裁に控訴しております。

よって、まだ係争中であるということです。

 

  個人的意見ですが、乱暴に言いますと、国の機関なんだから、そんな相手の無知を逆手にとるような卑怯な回収方法はせずに、ちゃんと相手に権利や義務の範囲を説明して回収しなさいと言いたいです。(説明義務違反じゃないの?)
さらには、控訴などせずに自分の非はちゃんと認めて返金及び賠償して、とっとと回収方法を改めろよと思います。
(自分の非を認めない官僚資質が見えてしまってみっともないです)
裁判だって、時間もお金もかかり、神経だってすり減らすんだから早い決着に越したことはないのです。
 最後に皆様、保証人及び、連帯保証人のご依頼に関しては極力別の手段で対応できないか検討しましょう!!