義理の娘に財産を渡したくない時ってどうしたらいいの?『遺言』ではそれが出来ないって知ってた!?
先日、長男夫婦に子供がいない(要は、孫がいない)親御さんからこんな相談がありました。「そろそろ自分達の遺産相続について考え始めたのですが、長男夫婦には子供がおりません。息子に遺産が渡るのはいいのですが、そのあと義理の娘(嫁)にうちの財産が渡るのは納得が出来ません。何かいい解決方法はないのでしょうか?」というものです。少子化の最中、こんな悩みを持つ方も増えているのかもしれません。今回はこの事についてお話したいと思います。
遺言では自分が亡くなった際の財産の承継先しか決められない
今回のお話は、先祖代々の不動産や自分達が築き上げてきたものを血筋ではない者に渡したくないという感情からきているものと思われます。特に今回のケースでは、息子(長男)が死んだ後も次男夫婦には子供がおり(要は、孫がいる)ますので、そちらで血統が続いていきますので、余計こう思われるのでしょう。
自分の死後の財産の承継先を決める方法としては、『遺言』が思い浮かぶと思います。しかしながら、この方法では今回の悩みを解決することはほぼ難しいでしょう。何故なら、『遺言』で承継先を決められるのは、自分が死んだ際の承継先しか決められないからです。今回の場合は、長男に渡すところまでしか決められず、長男に渡った後以降のことまでは決められないのです。
長男に言い含めておき、長男が自分の死後の承継先を遺言すれば可能ですが、それは長男が決めることであって親から制約を受けることではありませんので、現実的ではありません。
何か他の方法があるのでしょうか?
『遺言』で出来ないなら、他に方法はあるのでしょうか?実は、解決する方法があるのです。それは、家族信託を利用した方法で、具体的には、「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」というものです。
「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」とは、現受益者の有する信託受益権(信託財産より給付を受ける権利)が当該受益者の死亡により、予め指定された者に順次承継される旨の定めのある信託のことです。
受益権の承継には回数制限はなく、順次受益者が指定されていても構いません。ただし、信託期間は、信託法第91条により、信託がされたときから30年を経過後に新たに受益権を取得した受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでとされています。つまり、30年を経過した後は、受益権の新たな承継は一度しか認められないということです。
あと、信託設定時において、受益者が現存している必要はなく、まだ産まれていない孫や姪甥を受益者として定めることも可能です。
家族信託について全くご存知ない方からすれば、何の話をしているの?というレベルかもしれませんので、下記に簡単な図解がしてありますので、リンク先を張っておきます。
一般社団法人 信託協会HP内 後継ぎ遺贈型の受益者連続信託
https://www.shintaku-kyokai.or.jp/products/individual/assetsuccession/successor.html
注)図解内で受託者が信託銀行等になっていますが、必ずしもその必要はありません。
注意すべきポイントは?
「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」において、注意すべきポイントは以下になります。
・相続税の課税・・・受益者連続型の信託の場合、受益者の死亡による受益権の承継が発生する度、
当該受益権(元本受益権+収益受益権)が財産権として相続税の課税対象と
なります。税務面からみた場合必ずしも、効率的な仕組みとは限りません。
・遺留分減殺請求の対象
・・・信託による受益権の承継は、民法上の遺留分の適用を排除するものではありません。
遺留分に抵触するような信託受益権の承継を定めていると、受益者の死亡による
受益権の承継が発生する度、遺留分減殺額請求を受ける可能性があり、信託財産からの
精算作業が必要になる可能性があります。