孫の学費を援助してもらったら、それは特別受益になるの!?

 「特別受益」とは、被相続人から生前贈与や遺贈などにより、特定の相続人だけが受け取った財産がある場合、「相続財産の前渡し」として、実際の相続の際には相続財産に持ち戻しをした上で相続分を算定するという相続人間の公平を図るための制度のことです。今回は孫への学費援助金はどう扱われるのかをお話させて頂きます。

 

孫への学費援助金は基本、特別受益にあたらない

 まずは基本的な結論からお話しますと、孫への学費援助金は特別受益にあたりません。何故なら、民法上の規定は下記のようになっているからです。

【民法903条1項】

共同相続人中に、被相続人から遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価格にその贈与の価格を加えたものを相続財産とみなし、900条から902条までの規定により算定した相続財産の中からその遺贈又は贈与の価格を控除した残額をもってその者の相続分とする」

 規定の中の下線部のとおり、共同相続人中とありますので、孫は基本、共同相続人に当たらないため特別受益にはあたらないのです。

 

ただし、孫への学費援助金が特別受益になる場合もあります。

 上述のとおり、基本は孫への学費援助金は特別受益にはあたりませんが、規定内からもわかるとおり、特別受益に当たる場合も存在します。では、どういった場合でしょうか?

① 被相続人が孫と養子縁組した場合

② 孫が代襲相続人になる場合

③ 実質的に孫ではなく、子どもへの贈与になる場合

 上記に当てはまった場合には、孫への学費援助金であっても特別受益にあたります。

①②の場合は、孫は規定中の共同相続人となるからです。③については判断が難しいのですが、過去の審判例にこんなものがあります。

 (過去審判例)

 相続人が自分の子供に対する扶養義務を怠っていた事情があるため、被相続人の当該孫への学費や生活費の援助が実質的には相続人への贈与であると判断されました。【神戸家尼崎支審昭和47年12月28日】

 相続人が扶養義務を果たしていないことで実質的な部分が問われた訳です。

 

「教育資金贈与信託」の場合はどうか?

 教育資金贈与信託とは、祖父母など(贈与者)が、孫など(受贈者)の教育資金に充てるための資金を、信託銀行などに設けた特別な口座(教育資金管理口座)に信託して、受贈者(孫など)が教育費に充てるために払出しを受けられるようにするものです。条件を満たせば、最大1,500万円まで贈与税が非課税になる制度のことです。

 この場合であっても、基本的には孫への贈与になりますので、通常は特別受益にはあたりません。要は、上述の通り、判断すればいいということです。

 

上述に関連して気にかけておくこと。

 上述の通り、特別受益にあたるかどうかを述べてきましたが、上述に関連して気にかけておくことがあります。それは、下記になります。

〇 孫が養子縁組をした場合や代襲相続人になった場合の話ですが、上述では特別受益にあたると述べましたが、学費援助(贈与)の時期が問われる場合もあるということです。

 養子縁組した後や代襲相続人になった後の学費援助(贈与)の場合は、特別受益にあたるのは明白なのですが、養子縁組前や代襲相続人になる前の学費援助(贈与)の場合については、見解が分かれているのです。

 最近の裁判例では、孫が代襲相続人となる前になされた学費援助(贈与)は、実質的に「相続分の前渡し」と評価できる特段の事情がある場合を除いて、原則として特別受益にあたらないとされております。(福岡高裁平成29年5月18日判決・判例時報2346号81頁)

 養子縁組の場合についてはまだ議論があり、現在のところ最高裁の判例はないようです。

 

 このように状況等によっては判断が変わり得ることも気に留めておいてください!!

 

 

相続

Posted by riplaboblog