令和4年分から短期の退職金に対する所得課税が強化されました!?

 退職所得は、長年の勤務に対する給与の一括後払いであることや退職後の生活資金の原資であるため、所得課税においては優遇されております。しかしながら近年、その仕組みを利用して租税回避する事例が報告されています。
 そういった背景などもあり、令和3年度の税制改正によって短期の退職金に対する所得課税が強化されました。今回はそのお話をしたいと思います。

 

退職金に対する所得税の計算方法は?

 上述しましたが、退職金に対する所得課税は優遇されておりまして、下記のようになっております。

 

 まず、退職所得の金額は原則として、次のように計算します。

(収入金額(源泉徴収される前の金額) - 退職所得控除額※1) × 1 / 2※2 = 退職所得の金額

 ※1 退職所得控除額は、退職金に対して課税されない一定の金額のことをいい、下記の算式で計算をします。

・勤務期間が20年以内…40万円×勤務年数
・勤務期間が20年超…800万円+70万円×(勤務年数-20年)

 ※2 1/2課税というのも非常に優遇されております。

 上記で計算した退職所得の金額に所定の税率等を掛けて所得税を計算します。

 

(例)勤続年数29年6カ月 退職一時金2100万円としますと、

  (収入金額2,100円-退職所得控除額1,500万円)× 1/2 = 300万円(退職所得の金額)

  退職所得控除額=800万円+70万円×(30-20年)=1500万円(1年に満たない端数は切上げ)

    所得税=退職所得金額300万円×10%-9万7500円=20万2500円

 注)別途、住民税も10%課税されます。

 

令和4年分から短期の退職金に対する所得課税が強化!

 令和3年度税制改正によって、短期の勤務期間の人に支給される退職金(短期退職所得等)に係る所得課税が強化されました。(増税)

 その内容は、勤務期間が5年以下の人に支給される退職金について、退職所得控除後の金額のうち300万円を超える部分1/2を乗じずに課税退職所得が算出されることとなりました。

 注意点は、1/2がなくなるのは、退職所得控除後の金額のうち300万円を超える部分という点です。退職所得控除後の金額全体ではない点には気をつけて下さい!!

 

(例)勤続年数5年 退職一時金800万円としますと、

   退職所得控除後の金は、800万円 -(40万円×5年)= 600万円

   この600万円を300万円以下と300万円超に分けて

   300万円×1/2+(600万円-300万円)=450万円

   となります。

   ちなみに以前のままの計算であれば、(800万円-40万円×5年)×1/2=300万円

   計算されますので、この例の場合は課税金額が1.5倍に増えたということです。

  

会社役員などは従来から「1/2課税」はありません

 さらに注意点としましては、今回の改正は「特定役員等以外」に拡大したということです。

 従来より、「1/2課税」については勤続年数が5年以下である人が支払いを受ける退職金で支払い対象が「特定役員等」である場合は廃止されていました。

 特定役員等とは、

 ・国会議員及び地方公共団体の議会の議員
 ・国家公務員及び地方公務員
 ・法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人並びに
  これら以外の者で法人の経営に従事している一定の者

 又、この場合は300万円超についてだけでなく、退職所得控除後の金額全体についてですので、その点もお間違えの無いようにしてください。

 

まとめ

 今回の所得課税強化につきましては、短期の勤務期間で退職をする人に支払われる退職金に対してであり、又300万円超の部分に対してですので増税といっても影響を受けるのはほんの一部の人達だけでしょう。(300万円未満の支給であれば影響はなし)

 そもそも、5年以下の勤続期間で退職金が300万円を超えるというのは一般的ではありません。やはり、租税回避行為に対する牽制という意味合いなのでしょう。

 

 

  

    

税金

Posted by riplaboblog