相続人が未成年者だと相続税が安くなる『 未成年者控除 』とは!?
相続税は幼い子どもであっても課税されます。未成年者でも納税義務は免れられないのです。しかしながら、他の成人相続人と全く同等では、さすがに公平とは言えません。(教育費や養育費など成人になるまでに相当のお金がかかるからです)そのため、相続人が未成年者の場合には相続税を減額するしくみがあります。今回は「未成年者控除」についてお話したいと思います。
相続税の『未成年者控除』とは?
冒頭でもお話しましたが、相続人の中に未成年者がいる場合にはその未成年者の相続税額を安くするしくみがあります。それが、『未成年者控除』です。
未成年者控除とは、未成年者の相続税額から計算式に基づいた金額分、税額控除してもらえるものです。
では、未成年者であれば誰でもこの控除を受けられるのでしょうか。いえ、やはりそこには受けられる要件というものが存在します。その要件とは、下記になります。
要件①~④をすべて満たす必要があります。
要件①:相続開始日に未成年者であること
要件②:相続又は遺贈により財産を取得したこと
要件③:法定相続人であること
(相続放棄があった場合にはその放棄がなかったものとした場合の相続人)
要件④:相続開始日に日本国内に住所があること(一定の者を除く)
分かりにくいケースを少しだけご紹介しましょう。
(ケース①)未成年者が結婚して成年擬制により成人になった場合は?
(回答)未成年者が結婚して民法上成年に達したものとみなされても(成年擬制)、未成年者控除は受けられます。
(ケース②)相続放棄をしたが生命保険金を受け取った未成年者は?
(回答)生命保険金の受け取りは相続又は遺贈により財産を取得した者に該当しますので受けられます。分かりにくいのは、相続放棄したのであれば相続人じゃなくなったのではと思われるかもしれませんが、この法定相続人要件は相続放棄がなかったものとした場合の相続人であるためOKなのです。
(ケース③)遺贈により財産を受け取った相続人でない孫は?
(回答)法定相続人に該当しないため受けられません。
未成年者控除額はどう計算するのか?
未成年者控除額は下記の計算式で求めます。
(18歳-相続開始時の未成年者の年齢(注)) ✕ 10万円
(注)1年未満切捨て
具体例は下記になります。
〇 相続開始時の年齢が13歳5ヶ月の場合
(18歳-13歳(端数は切り捨て))✕10万円=50万円
なお、未成年者控除前の相続税額より未成年者控除額の方が大きい場合には、その控除しきれない金額をその未成年者の扶養義務者から控除することができます。
成人年齢引き下げの影響は?
まずは、成人年齢が引き下げになったということは、単純に控除額が減額になりました。簡単にいえば、20万円(2歳×10万円)減額されたということです。
あとここからが複雑なのですが、未成年者控除は場合によっては複数回適用するかもしれません。その際の計算が複雑になりました。
未成年者が複数回相続した場合には、それぞれの相続において未成年者控除の適用が可能です。ですが2回目以降の相続においては1回目で適用した金額を控除することが出来ません。
この1回目で適用した金額の計算において、2回目の相続が成人年齢引き下げ後(令和4年4月1日以降)だった場合に複雑になりました。言葉で説明するより例を挙げたほうが分かりやすいので下記に示しました。
〇 第1回目の相続 平成27年
未成年者の年齢 1歳 未成年者の相続税額 90万円…①(扶養義務者の相続税額はなし)
未成年者控除額 10万円✕(20歳-1歳)=190万円…②
控除された金額 ①<②…90万円…③ 納付すべき相続税額 0(ゼロ)円
〇 第2回目の相続 令和5年
未成年者の年齢 9歳 未成年者の相続税額 100万円…④(扶養義務者の相続税額はなし)
1回目の相続における未成年者控除限度額 10万円×(18歳-1歳)=170万円…⑤
⑤-③(既往の控除額)=170万円-90万円=80万円…⑥
2回目の未成年者控除額 10万円✕(18歳-9歳)=90万円…⑦
⑦>⑥…80万円…⑧
納付すべき相続税額 ④-⑧=20万円
2回目の控除額計算において、1回目の控除額を計算する際に20歳ではなく18歳として再計算するという部分が複雑な部分になります。
このように「成人年齢引き下げ」の影響は、相続税の未成年者控除にも少なからず及んでいます。お間違えの無いようにしましょう!!