国民年金保険料納付期間延長議論開始!!伝わるニュースはデメリットばかりだが・・・!?

 厚生労働省は10月25日、社会保障審議会で年金制度改革の議論を開始しました。その中で大きく報じられているのが国民年金保険料の納付期間延長についてだが、その内容はデメリットばかりが強調されている気がしてならない?果たして本当に改悪ばかりなのか冷静な目で判断したいと思うのだが・・・。

 

議論の内容は概ねこのようになっている

 国民年金保険料の納付期間延長については下記のように議論されているようです。

 〇 保険料の納付期間を現行の20歳以上60歳未満までの40年間から
   65歳未満までの45年間に延長する。

 〇 5年に1度の年金財政検証に合わせて令和6年に結論を出して令和7年の通常国会に
   関連法改正案の提出を目指す。

 この内容からワイドショーなどでは、約100万円の保険料負担増(月額16,590円[今年度]×12ヶ月×5年間)ばかりを強調し、さもデメリットしかないような報道が目立つのだが、本当にそうだろうか?

 

納付の視点だけでなく受給の視点も視るべきでは?

 FPとして思うにワイドショーの内容についてはバイアスがかかりすぎていると判断する。テレビで流れる情報全般について最近このことは強く感じるようになってきた。

 年金制度については納付と受給のバランスについても検討されるはずである。納付が増えれば受給もそれに伴って増えると考えるのが自然であると思うのだが(多少水準が落ちたとしても)。

 現行制度においては、ひと月保険料納付期間が増えると受給額は1,620円くらい増える計算になります。単純計算すれば、5年納付期間が増えれば年額97,200円、もらえる年金(老齢基礎年金)が増えることになります。

 今年度年金満額777,800円を基準にすれば、満額は875,000円になる計算です。

 一部のニュースでは報じられているのだが、今回の議論の目的の中に少子高齢化に伴う年金の給付水準低下を抑制し、高齢者の生活保障につなげる狙いもあるようなのです。ですからデメリットばかりではない可能性も十分考えられるのです。

 

老齢基礎年金受給は民間では成し得ない制度であることも

 年金受給額が下がったとの報道は間違いではないが、それでも老齢基礎年金受給額については民間会社では成し得ない制度であることも言えると考えております。どういうことか?

 それは、自己負担額から計算すれば、約10年間の受給期間で元が取れる制度などノーリスクでは民間にはないからです。

 具体的にはこうなります。

16,590円(現行月保険料)×12ヶ月×40年間=7,963,200円

7,963,200円÷777,800円(年満額)≒10.24年

 さらに、今回の内容でデメリットがあるのはおもには、自営業者とその配偶者の一部、60歳以降にリタイアした者とその配偶者の一部である。65歳以降まで働く者にとっては何のデメリットもないのです。現在でも60歳以降に働く方は同世代の7割水準まで高まっています。企業の定年年齢が65歳まで完全に引き上げられればより高まるでしょう。

 このことをワイドショーでインタビューを受けていたサラリーマンの方たちがどれだけ把握できているのでしょうか。把握できていたら、回答も違っていたのではないでしょうか。

 

 今回の議論内容については、まだ詳細が未定の状況です。その段階で批判するのは時期尚早と言わざるを得ません。詳細がしっかりと把握できるまでは冷静な目で見続けたいと思います。